ginpeichanが映画を観た感想をだらだらと。


by ginpei_chan
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30

『武士の一分』★★★★★★★★☆(8.5点)

ようやく観てきました、キムタク主演の『武士の一分』。
いやあ、日曜日の夕方の回、映画館は凄く混んでましたよ。
特に混んでたのが『硫黄島からの手紙』
大ヒットの予感アリアリです。
もちろん、『武士』も混んでました。こちらもヒットしたようですね。

で、『武士の一分』
監督はもちろん巨匠・山田洋次。
木村拓哉が主人公の盲目の武士・三村新之丞を演じ、
ヒロインの、新之丞の妻・加世を演じたのは、元宝塚の娘役・壇れい。
そして、敵役に坂東三津五郎が登場!
脇を固めるのも、山田組常連の緒形拳や小林念侍をはじめ、
桃井かおりや笹野高史、大地康雄など豪華絢爛!
c0019227_10522790.jpg

さて。
物語については簡単に。
舞台は今回も海坂藩、主人公の三村新之丞は毒見役で、毒に当たって失明。
夫の処遇をとりなしてもらおうとした妻・加世が、番頭の島田藤弥の罠にはまり、
身体を弄ばれてしまい、盲目になってなお、三村は島田へ果し合いを挑む...

まず、木村拓哉ですが、予想以上に良かったですね。
殺陣もカッコよかったし、余計なものを削ぎ落としたような演技もよかった。
彼が、この経験を、今後の俳優人生に活かしてくれることを切に望みます。(笑)
殺陣に関しては、本格的にはクライマックスの決闘くらいしか見ることができませんが、
自宅の庭で木刀を振るうシーン、師匠の道場で稽古をつけてもらうシーン、
カッコよかったですね、ほんとに。
聞けば彼、幼少の頃に剣道をしていたのだとか。納得です。
また、彼独特の笑いのセンスもとても活きている作品でした。

この映画の「笑い」については、これはもう笹野高史さんの素晴らしさに尽きます!
これは、脚本の良さにも拠るのですが、
ところどころに笑いどころが詰まっていて、観る側を飽きさせなかったですね。
映画館は、ところどころで館内爆笑の渦!
観客は、それは10代の若者から60、70代くらいのご年配の方々もいて、
みんな一緒になって笑えるというのは幸せなことだなあと思いましたよ。
笹野さんは本当に上手かった!というか、どの作品を観ても上手いんですけど、
今回はとても重要な役を与えられて、
笹野さんを起用した製作側の勝利ともいえるでしょうね。

また、ヒロイン役の壇れいさんもよかった。
来年の、「お嫁さんにしたい芸能人ランキング」でベスト10入りする
と読みましたがどうでしょうか?(笑)
美しく、可憐で、ひたむきで、控えめで、
それでいてちょっとあごのラインがふっくらしているのもgood!!(笑)
正直、最初は、壇れいさんの名前も知らなくて、
「主役のギャラに予算を割いたから、大物女優を据えられなかったんだな...」と
思っていたのですが、僕の下衆い予想に大いに反してくれました。(笑)

それから、敵役の坂東八十助三津五郎。
僕のイメージでは、もっと細い感じの人だったんですが、
役に合わせて肥えたのでしょうか?
コスい悪人で、キレ者で、どことなく妖しいという島田藤弥役をうまく演じてましたね。
もちろん、その他脇を固める役者さんたちも、どれもさすがの芸達者ぶりでした。
緒形拳はかっこよかったですねえ...1シーンしか出ないのがもったいないくらい。

それから、三村家の、下級武士としての暮らしぶりの描写や、
新之丞が勤める城内の描写、小林念侍が腹を切らされる描写とか、
彼が責任を取らされたという侍の上下関係のしきたりとか、
新之丞がお上に謁見するところとか、いろんな描写が面白い作品でしたね。
山田時代劇には、こういう楽しみがいっぱいあって好きです。

それから、今回も、クライマックスに決闘シーンを持ってきていますが、
『たそがれ清兵衛』よりはあっさりと、『隠し剣鬼の爪』よりは濃く描いてますね。
たぶん、初めて山田時代劇を観た人は、えらくアッサリに映るんじゃないかな。
これは、やはり、一番描きたいものをその後に持ってきているからだと思います。
今回も、ラストは、そういう話の筋になるとは分かってはいるものの、
やはりじーんときてしまいましたねえ...。
笑いと涙、殺陣とラブストーリー、このメリハリが山田洋次の真骨頂でしょう。

そう、思ったのですが、今回は笹野高史という俳優を三村新之丞の中間に配したことで、
随所に笑いが盛り込まれていて、とても面白かったのですが、
今回は、そういう軽妙なところを強調していたと思うのです。
今回のこの『武士の一分』という作品は、僕が思うに、山田洋次という映画監督の、
『寅さん』シリーズの人情喜劇と、藤沢周平時代劇のシリーズのひとつの結実
なのではないかと。
彼(もしくは製作者)が、興行的なことを考慮し、作品の質も考慮した結果、
木村拓哉の起用、笹野高史さんの起用、そしてこの脚本だったのではないでしょうか。
それが全て計算のうえだとしたら、まさに見事!一本取られました。

『たそがれ清兵衛』では、当時の下級武士の清貧ともいえる生活の描写が鮮烈で、
田中泯という俳優を起用した殺陣のシーンに時間を割き、
比較的ストイックな作品だったと思います。
『隠し剣鬼の爪』は、その路線を継承しつつも、
殺陣のシーンや、「隠し剣」のシーンをわりとあっさりと描き、
当時の武士たちの権力闘争や、身分の違う若い男女の密かな思慕など、
人間関係をじっくり丹念に描いたものになりました。
そして、3部作の最後になるこの『武士の一分』では、
それまでに山田洋次監督が培った人情喜劇のテイストをふんだんに盛り込み、
ストーリーも全般的に、3部作では一番分かりやすい物語になっていて、
製作的にも興行的にも、山田洋次の集大成的作品になったのではないでしょうか。

とても分かりやすく、万人が楽しめて、笑えて泣ける。
とてもよくできた時代劇の傑作が誕生しました。
これは、今年公開された邦画の中でも、屈指のエンターテイメントです。
8.5点です。
[PR]
by ginpei_chan | 2006-12-18 11:54 | 映画(は行)