『太陽』★★★★★★★★★☆(9.5点)
2007年 02月 21日
ロシアのアレクサンドル・ソクーロフ監督とロシアのスタッフ、
そして、イッセー尾形をはじめとする日本人の俳優たちによって作り上げられた、
太平洋戦争終結直前の昭和天皇の姿を描いた『太陽』。
去年、映画館で観たかったのですが、観逃してしまい、
しかし、企画上映という形で、年をまたいで映画館で観る機会を得ることができました。
この映画、天皇ヒロヒトの日常を、その孤独と苦悩を通して描かれています。
かつて、僕たち日本人が、歴史の授業でも教えてもらえなかった、「天皇裕仁」。
太平洋戦争といえば、満州事変、盧溝橋事件、日中戦争、第二次大戦開戦、
真珠湾攻撃、マレー沖海戦、ミッドウェー海戦、レイテ沖海戦、硫黄島、
沖縄本土決戦、原爆投下、御前会議、玉音放送...
歴史の教科書には、開戦し、日本がどういう戦役を経て、停戦に至ったかが書かれている。
しかし、いつも、その戦争に於いて、最高意思決定機関の中心にいたはずの
唯一絶対の存在についての記述が、驚くほど抜けている。
神だったのかもしれない。人間だったのかもしれない。
好戦的だったのかもしれない。穏健的だったかもしれない。
傀儡だったのかもしれない。優秀な海洋生物学者だったのかもしれない。
何であれ、一種のタブーとしてこれまで語られなかった「彼」が、そこにいた。
それを描いてくれた監督、スタッフ、俳優たちに、素直に感謝したいと思います。
それに、主役の裕仁天皇を演じたイッセー尾形!
あの、独特の「あっ、そう」から、仕草から、無味乾燥的な佇まいから、
全てをまるで「彼」がそうであったのかのように「彼」になりきって、
「彼」の、最も近くにいた侍従たちにも理解されなかったであろう、
誰にも愛されない孤独や現人神たる苦悩をまざまざと体現してみせた。
おそらく、去年観たさまざまな映画の中で、最も印象的な演技だったのではないだろうか?
たとえ、実際の「彼」がそうでなかったとしても、
当時から60年以上が経った今、それを僕たちに「リアル=現実にあったこと」として
感じさせてくれることができるのは、彼しかいなかったのだと思います。
とにかく、静かでいて鮮烈、穏やかでいて圧倒的、そんな「裕仁」像でした。
素晴らしかった!
2時間ほどの作品の中で、舞台となるのは、彼が終戦間際に暮らしていた、
皇居内の海洋生物研究所と、マッカーサーに会いに行った連合国軍総司令部のみ。
映画館では、残念ながら寝息も聞こえていました。
でも、僕は、2時間の間、少しも眠くなかったし、確かに惹き込まれていました。
観終わった後、僕が、映画館での映画鑑賞体験の中でごく稀に感じる、
「凄い映画を観た。」
面白いとか、爽快だったとか、カッコよかったとか、エロかったとか、可愛かったとか、
そういうのを超えちゃったときに、ただ「凄かった」と感じることがあります。
去年でいえば、『ホテル・ルワンダ』や『ユナイテッド93』、
その前では『ミリオンダラー・ベイビー』や『オールド・ボーイ』がそれに当たるんですが...
もちろん、誰が観てもそう感じるというわけではないと思いますが、
少なくとも僕個人にはフィットしてしまった。そんな映画だと思います。
ああ...久々に出逢えたよ、こんな映画に。
9.5点です。
そして、イッセー尾形をはじめとする日本人の俳優たちによって作り上げられた、
太平洋戦争終結直前の昭和天皇の姿を描いた『太陽』。
去年、映画館で観たかったのですが、観逃してしまい、
しかし、企画上映という形で、年をまたいで映画館で観る機会を得ることができました。
この映画、天皇ヒロヒトの日常を、その孤独と苦悩を通して描かれています。
かつて、僕たち日本人が、歴史の授業でも教えてもらえなかった、「天皇裕仁」。
太平洋戦争といえば、満州事変、盧溝橋事件、日中戦争、第二次大戦開戦、
真珠湾攻撃、マレー沖海戦、ミッドウェー海戦、レイテ沖海戦、硫黄島、
沖縄本土決戦、原爆投下、御前会議、玉音放送...
歴史の教科書には、開戦し、日本がどういう戦役を経て、停戦に至ったかが書かれている。
しかし、いつも、その戦争に於いて、最高意思決定機関の中心にいたはずの
唯一絶対の存在についての記述が、驚くほど抜けている。
神だったのかもしれない。人間だったのかもしれない。
好戦的だったのかもしれない。穏健的だったかもしれない。
傀儡だったのかもしれない。優秀な海洋生物学者だったのかもしれない。
何であれ、一種のタブーとしてこれまで語られなかった「彼」が、そこにいた。
それを描いてくれた監督、スタッフ、俳優たちに、素直に感謝したいと思います。
それに、主役の裕仁天皇を演じたイッセー尾形!
あの、独特の「あっ、そう」から、仕草から、無味乾燥的な佇まいから、
全てをまるで「彼」がそうであったのかのように「彼」になりきって、
「彼」の、最も近くにいた侍従たちにも理解されなかったであろう、
誰にも愛されない孤独や現人神たる苦悩をまざまざと体現してみせた。
おそらく、去年観たさまざまな映画の中で、最も印象的な演技だったのではないだろうか?
たとえ、実際の「彼」がそうでなかったとしても、
当時から60年以上が経った今、それを僕たちに「リアル=現実にあったこと」として
感じさせてくれることができるのは、彼しかいなかったのだと思います。
とにかく、静かでいて鮮烈、穏やかでいて圧倒的、そんな「裕仁」像でした。
素晴らしかった!
2時間ほどの作品の中で、舞台となるのは、彼が終戦間際に暮らしていた、
皇居内の海洋生物研究所と、マッカーサーに会いに行った連合国軍総司令部のみ。
映画館では、残念ながら寝息も聞こえていました。
でも、僕は、2時間の間、少しも眠くなかったし、確かに惹き込まれていました。
観終わった後、僕が、映画館での映画鑑賞体験の中でごく稀に感じる、
「凄い映画を観た。」
面白いとか、爽快だったとか、カッコよかったとか、エロかったとか、可愛かったとか、
そういうのを超えちゃったときに、ただ「凄かった」と感じることがあります。
去年でいえば、『ホテル・ルワンダ』や『ユナイテッド93』、
その前では『ミリオンダラー・ベイビー』や『オールド・ボーイ』がそれに当たるんですが...
もちろん、誰が観てもそう感じるというわけではないと思いますが、
少なくとも僕個人にはフィットしてしまった。そんな映画だと思います。
ああ...久々に出逢えたよ、こんな映画に。
9.5点です。
by ginpei_chan
| 2007-02-21 16:43
| 映画(た行)